エアコンの見守り機能は賃貸の高齢入居者に使えるか|通知は誰に届き、エアコンを使わない人をどう見守るか
「父の部屋のエアコンに見守り機能を付けたいのですが、いいですか」——単身の高齢者に部屋を貸していると、家族からこうした相談を受けることがあります。エアコンには、運転の状況や部屋の温度をスマートフォンで確かめられる機種があります。では、大家・管理会社は、この機能を入居者の見守りとして当てにしてよいのでしょうか。本記事では、貸す側が確かめることを整理します。
エアコンの見守り機能とは|運転や室温をアプリで確かめる仕組み
エアコンの見守り機能は、エアコンを無線LAN(Wi-Fi)につなぎ、メーカーのスマートフォンアプリから運転しているか、部屋の温度が何度かを確かめたり、室温が高いときなどに通知を受けたりする仕組みです。
どの情報が分かり、どんな条件で通知が届くかは、メーカーや機種によって違います。共通しているのは、エアコンが無線LANにつながっていることと、誰かがアプリに登録していることが前提になる点です。
賃貸では「誰のエアコンか」で話が変わる
賃貸の部屋のエアコンは、大きく2つに分かれます。
- 設備として付いているエアコン——貸主の持ち物です。民法は、賃貸人が使用・収益に必要な修繕をする義務を負うと定めています[3]。見守り機能のために無線LANアダプターを後から付ける、機種を入れ替える、といった変更は、持ち主である貸主の判断になります。
- 入居者が持ち込んだエアコン——入居者の私物です。見守り機能を使うかどうかは本人と家族が決めることですが、取り付けの工事(配管穴・室外機の置き場所)は、契約で貸主の承諾が要ることがあります。
家族から「設備のエアコンに見守り機能を付けたい」と言われたら、どの機器を、誰の費用で付け、退去時にどうするかを先に決めておくと、後のもめごとを防げます。部屋に見守りの機器を付けるときの承諾の考え方は見守りカメラの設置の記事で整理しています。
通知は誰に届くのか|アプリを登録した人だけ
貸す側にとって大事なのは、通知が誰に届くのかです。エアコンの見守り機能の通知は、そのエアコンをアプリに登録した人——多くは入居者本人か、離れて暮らす家族——に届きます。設備のエアコンであっても、アプリを登録していない大家・管理会社には何も届きません。
また、無線LANにつなぐには部屋に回線が要り、接続が切れれば見守りも止まります。回線のない部屋で使える見守りはネット環境なしの見守りの記事で比べています。
貸す側が通知を受ける形にしたい場合は、入居者の部屋の様子(在室や室温)を貸す側が見ることになるため、本人の同意が欠かせません。家族から連絡が来たときの合鍵や立ち会いも決めておきます。室内に入る前の手順は安否確認の立ち入りの記事にまとめています。
エアコンの見守りが届きにくい入居者|屋内の熱中症死亡の多くは「使っていなかった人」
エアコンの見守り機能は、エアコンを使っている人の部屋の様子を伝える仕組みです。ところが、熱中症で亡くなる人の多くは、エアコンを使っていませんでした。
東京都監察医務院によると、令和7年夏(6月〜9月)に東京都23区で熱中症で亡くなった人は193人で、そのうち181人が屋内で亡くなっていました。屋内で亡くなった181人のうち、エアコンが設置されていたのは149人でしたが、使っていたのは28人(15.5%)で、121人(66.8%)は設置があるのに使っていませんでした。設置がなかった人も23人いました[1]。
全国でも、令和7年(5月〜9月)の熱中症による救急搬送は10万510人で、集計を始めた平成20年以降で最多でした[2]。年齢別では高齢者が約57%、発生場所別では住居が約38%で最も多くなっています[2]。また、埼玉県環境科学国際センターが高齢者の寝室で行った調査では、暑いと感じていてもエアコンの使用を控えたり、使わなかったりする人がいることが分かっています[4]。
次のような入居者・場面では、エアコンの見守り機能だけでは異変に気づきにくくなります。
- エアコンを使わない・使うのを控える入居者——電気代を気にして止めている、そもそもエアコンがない、という部屋です。屋内の熱中症死亡で最も多いのがこの層です[1]。
- エアコンが止まっていることが「異変」なのか分からないとき——外出・入院・節約でも止まります。
- 夏以外の季節——冬に暖房を使わない入居者もいます。冬の部屋の事故は冬の孤独死の記事で扱っています。
- 回線やアプリの登録が切れたとき——つながっていなければ通知は出ません。
貸す側は、エアコンの見守り機能とどう組み合わせるか
貸す側は、エアコンの見守り機能を止めずに、次の順で備えを組み合わせると整理しやすくなります。
- 設備のエアコンが動くかを、暑くなる前に確かめる——故障していれば使えません。夏場の声かけと点検は夏の熱中症と見守りの記事で整理しています。
- 家族が見守り機能を使うなら、通知を受ける人と連絡の流れを聞く——通知を受けた家族が動けないとき、管理会社のどの窓口に電話すればよいかを伝えておく。
- エアコンを使わない入居者にも働く仕組みを用意する——エアコンだけでなく、部屋全体の暮らしの様子で異変に気づき、貸す側に知らせが届く見守りを入居時に組み込む。
R65が提供している見守りは、部屋全体の電気の使い方の変化で暮らしの異変に気づく方式で、エアコンを使わない入居者でも、照明や冷蔵庫などを含む部屋全体の電気の使い方の変化を捉えます。ただし、普段との比較で判断するため知らせまでに時間差があり、熱中症や亡くなること自体を防ぐものではありません(見守りサービスのデメリットの記事)。仕組みはエアコンを使わない入居者にも使える、電気データの見守りの紹介ページで確認できます。LINEの見守りとの違いはLINE見守りの記事で扱っています。
まとめ|エアコンの見守りは「使う人」の見守り、貸す側の備えは別に持つ
- エアコンの見守り機能は、運転や室温をアプリで確かめ、通知を受ける仕組み——無線LANへの接続とアプリの登録が前提
- 設備のエアコンは貸主の持ち物——機器の追加や入れ替えは貸主の判断になる[3]
- 通知が届くのはアプリを登録した人だけ——大家・管理会社に届けるには本人の同意が要る
- 屋内の熱中症死亡の多くはエアコンを使っていなかった人——23区の令和7年夏は屋内181人中121人が設置ありで不使用[1]
- エアコンを使わない入居者にも働く見守りを、貸す側が別に用意する
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