2026.09.14

賃貸の部屋に見守りカメラは付けられるのか|大家の承諾が要る設置・要らない設置と、玄関の外を映すとき

約2,700文字読了目安 5分

「一人暮らしの母の部屋に、見守りカメラを付けたい」——入居者の家族からこう相談されたとき、判断の分かれ目は機器の種類ではありません。置くだけか、ネジで留めるか、配線を通すか、玄関の外まで映すかで、大家の承諾の要否、退去時の負担、映される人の範囲が変わります。国の標準契約書とガイドライン、関係する法律から整理します。

賃貸の部屋に見守りカメラを置くのに、大家の承諾は要るのか

置くだけなら、多くの場合は要りません。国土交通省の賃貸住宅標準契約書は第8条2項で、借主が貸主の書面による承諾なしに行ってはならない行為を「増築、改築、移転、改造若しくは模様替又は本物件の敷地内における工作物の設置」と定めています[2]。棚に置いてコンセントに差すだけの機器は、この列挙にあたりません。

ただし実際の契約書が標準契約書と同じとは限りません。承諾が要るかは「何を置くか」ではなく「建物に手を加えるか」で決まると押さえたうえで、手元の契約書の禁止事項を確認してください。

天井や壁にネジで留めると、退去時の負担が変わる

民法621条は、借主は通常の使用による損耗と経年変化を除く損傷を、契約の終了時に原状に戻す義務を負うと定めています[1]。どこまでが通常の使用かは、国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)」が例示しています[3]

天井にビスで固定するカメラは、3つ目に近い扱いになり得ます。同ガイドラインは家具の転倒防止についても、あらかじめ貸主の承諾を得るか、くぎやネジを使わない方法を検討するとしています[3]補修費をいくらまで請求できるかは、年数と区分で別に決まります。

電源を壁の中に通すのは、資格が要る電気工事になる

天井のカメラに電源を取るため、コンセントを増やしたり壁や天井の中に電線を通したりする作業は、家族が自分で行えるものではありません。電気工事士法は一般用電気工作物等を設置・変更する工事を「電気工事」とし(2条3項)、第一種または第二種電気工事士でなければその作業に従事してはならないと定めています(3条2項)[4]。政令で除かれる軽微な工事は、接続器にコードをつなぐ工事などに限られます[4]

配線工事を伴う設置は第8条2項の「改造」にあたる可能性が高く、書面の承諾を先に取る順番になります。

玄関の外に向けると、ほかの入居者も映る

出入りを確かめたいと、ドアの外や共用廊下にカメラを向けたい相談もあります。標準契約書は別表第2で「階段、廊下等の共用部分に物品を置くこと」を、貸主の書面承諾が要る行為に挙げています[2]

映るのは親だけではありません。個人情報保護委員会はQ&Aで、事業者が防犯カメラを設置する場合に、画像が取得されていることを本人が容易に認識できるよう、作動中である旨を掲示するなどの措置を示しています(法20条1項)[5]。大家や管理会社が共用部に付けるならこの問題になり、個人の大家も個人情報取扱事業者にあたる点は同じです。家族の個人的な設置でも、隣の入居者から見れば毎日撮られていることに変わりはなく、苦情の火種になります。

映される本人が「嫌だ」と言ったら

賃貸借の契約者は入居者本人で、相談してきた家族ではありません。承諾を求める書面も、本人の名前で出てくるのが筋です。

見守りを断る高齢者の理由は、必要性がわからないことより見られること自体への抵抗であることが少なくありません。室内を映す方式は、その抵抗がもっとも強く出ます。本人が同意していないカメラを、家族の求めだけで大家が承諾する理由はありません。

映像が見えていても、駆けつける人がいなければ止まる

カメラに倒れている姿が映っても、遠方の家族がすぐ部屋に入れるとは限りません。鍵を持っているのは誰か、駆けつけを頼める相手は誰か。ここが決まっていないと、映像は「異変に気づいた」ところで止まります。

室内にカメラを置かず、電気の使われ方の変化から異変を知らせる見守りなら、映される抵抗も天井の穴も生じません。どの方式でも本人の同意が前提である点は変わりません。

承諾するなら、書面に残す3つ

標準契約書に付く増改築等の承諾書(例)は、承諾にあたっての確認事項を書く欄を設け、例に「収去等についての事項」を挙げています[2]。見守りカメラなら次の3点です。

  1. 取付けの位置と方法——置くだけか、ネジで留めるか、配線工事を誰が行うか
  2. 撮影する範囲——室内に限り、共用廊下や隣の住戸を映さない
  3. 退去時の扱い——撤去するか、穴の補修を誰が負担するか

手すりの取付けを承諾するときと同じく、断るより条件を付けて承諾するほうが、後の揉め事を減らせます。

まとめ:分かれ目は「建物に手を加えるか」と「誰が映るか」

  1. 置くだけ——標準契約書の承諾事項にはあたらない。手元の契約書は確認する
  2. ネジ留め・配線——原状回復の負担が借主側に寄り、配線は電気工事士の作業
  3. 玄関の外——共用部と他の入居者を映すため、承諾と掲示の問題になる
  4. 本人の同意——契約者は本人。家族の希望だけでは進めない

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