2026.09.06

連帯保証人が亡くなったら、その先の家賃は誰が保証するのか|高齢入居者で先に起きること

約3,100文字読了目安 6分

高齢の入居者について、連帯保証人の欄に書かれていた方が亡くなった——そう知らされたとき、貸主が最初に確かめるべきなのは相続人の連絡先ではありません。その日を境に、保証がどこまでしか効かなくなったのかです。

保証人が亡くなった時点で、保証は「そこまで」になる

国土交通省の賃貸住宅標準契約書(平成30年3月版・連帯保証人型)は、第17条第3項で「丙が負担する債務の元本は、乙又は丙が死亡したときに、確定するものとする。」と定めています。丙が連帯保証人、乙が借主です。つまり借主が亡くなったときだけでなく、保証人自身が亡くなったときも元本は確定します

元本の確定とは、その時点までに生じた債務に保証の範囲が固定されることです。確定後の家賃も、その後の滞納も、退去時の原状回復費用も、もう誰も保証していない状態になります。契約は続き、担保だけが抜け落ちます。

保証人の死亡を貸主が知らないまま数年が過ぎている契約は珍しくありません。知らなかったことは、確定していない理由にはなりません。

元本が確定する事由は、死亡だけではない

標準契約書の<作成にあたっての注意点>は、第17条第3項の解説で、平成29年民法改正により定められた元本確定事由として次の3つを挙げています(民法第465条の4第1項)。

  1. 債権者が保証人の財産について金銭の支払を目的とする債権の強制執行または担保権の実行を申し立て、その手続の開始があったとき
  2. 保証人が破産手続開始の決定を受けたとき
  3. 主たる債務者または保証人が死亡したとき

同解説は、契約書が③のみを記載しているのは確認的なものであって「①、②の事由を排除する趣旨ではない」と明記しています。保証人が破産していた場合も同じことが起きている、ということです。

相続人は確定した分を引き継ぐが、その先は引き継がない

保証人が亡くなると、確定した時点までの保証債務は相続の対象になります。ただし引き継がれるのは確定済みの金額の範囲だけで、その後に発生する家賃まで相続人が保証人になるわけではありません。「息子さんに引き継いでもらえばいい」という理解は、ここで食い違います。

なお個人の連帯保証は、そもそも極度額を定めなければ効力を生じません(民法第465条の2第2項)。標準契約書も第17条第2項で極度額を限度とし、頭書(6)と記名押印欄に金額を書かせる形にしています。令和2年4月以降の契約で極度額の記載が空欄なら、保証は最初から効いていません。この点は孤独死の原状回復費用は誰に請求できるのかでも扱っています。

代わりの保証人を立てさせられるか——特約が無ければ根拠が無い

実務でいちばん詰まるのがここです。新しい保証人を立ててほしいと言いたくなりますが、契約書にその定めが無ければ、借主にそれを求める根拠がありません。応じてもらえなければ、そこで止まります。

標準契約書の解説も、この点を将来の備えとして書いています。「連帯保証人の死亡や破産等があった場合には、借主は新たな連帯保証人に保証を委託するといった特約を結ぶことも考えられる」——つまり、あらかじめ特約に入れておく前提の話であって、事後に持ち出せる権利ではありません。

いま結んでいる契約書に、この特約が入っているか確かめてください。入っていなければ、次の更新や新規契約から第19条(特約条項)に加えるのが、この記事で唯一「今日できること」です。

高齢入居者では、保証人も同じ速度で高齢になる

単身高齢者の連帯保証人は、同年代のきょうだいや、すでに高齢の子であることが多くなります。入居時に元気でも、契約が10年続けば保証人の側が先に施設へ入る、判断能力を失う、亡くなる——どれも例外ではなく、起きる前提で設計すべき事象です。

認知症は条文上の確定事由ではありません。それでも意思の確認が取れない相手に履行を求めるのは実際には難しく、認知症の入居者と結んだ契約は無効になるのかで整理した意思能力の問題がそのまま保証人側にも起こります。

そもそも保証人を立てられないという申込みも増えています。それを理由に断る前に、保証人を立てられない高齢者を実際に受け入れている物件がどう組み立てているかを見ておくと、判断の幅が変わります。

現実的な立て直し先は、法人の家賃債務保証

個人の保証人を探し直すより、家賃債務保証会社へ切り替えるほうが現実的です。極度額の定めや元本確定の規定は「個人根保証契約」についてのもので、法人が保証人になる場合には適用されません。保証人が亡くなるたびに担保が抜ける構造そのものを断てます。

国土交通省は家賃債務保証業者の登録制度を設けており、登録事業者数は123者(令和8年8月13日時点)と公表されています。選定に迷う場合は、この一覧を出発点にできます。切替えの実務は高齢入居者の家賃債務保証、審査に通すポイントにまとめています。

ただし保証会社が引き受けるのは金銭だけです。異変に気づくことも、部屋へ駆けつけることもしません。保証が切れても住み続けてもらうために、見守りを賃貸側にどう置くかを同時に決めておくと、切替えが「損失の穴埋め」ではなく受け入れ継続の条件になります。

滞納を知らせないまま更新を重ねていた場合

保証人が健在なうちの運用も、あとで効いてきます。民法第458条の2は、保証人の請求があったとき債権者に債務の額や履行状況の情報提供義務を課しており、標準契約書も第17条第4項で同じ内容を定めています。

さらに同解説は、借主が継続的に支払いを怠っているのに貸主が保証人に通知せず、いたずらに契約を更新させている場合には、保証債務の履行請求が信義則に反するとして否定されることがあり得る(最高裁平成9年11月13日判決)と述べ、請求が無くても積極的な情報提供が望ましいとしています。滞納を伏せたまま更新を重ねた契約では、保証人が健在でも請求が通らないことがあります。高齢入居者の家賃滞納にどう対応するかもあわせてご覧ください。

まとめ:保証は切れるものとして設計する

  1. 保証人の死亡で元本は確定する。その後の家賃は保証されない
  2. 確定事由は死亡だけではない。強制執行の開始・破産も含まれる
  3. 相続人が引き継ぐのは確定済みの分まで。将来分の保証人にはならない
  4. 代わりを立てさせるには特約が要る。事後には求められない
  5. 高齢入居者では保証人も高齢化する。起きる前提で組む
  6. 法人の家賃債務保証なら元本確定の構造から外れる
  7. 滞納を知らせずに更新を重ねない。請求が否定されることがある

契約書の特約と保証の形をひとつ直しておくだけで、保証人が亡くなった日に慌てずに済みます。自分の物件で何が抜けているかは、60秒のリスク診断でも確認できます。

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