2026.08.16

高齢入居者と住宅火災|死者の75.6%が65歳以上、大家・管理会社の防火チェック

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高齢入居者の受け入れで真っ先に心配されるのは孤独死ですが、毎年の統計に残るリスクがもうひとつあります。住宅火災です。住宅火災で亡くなる人の4人に3人が65歳以上で、その比率は10年前より高くなっています。

火災で亡くなる人の4人に3人が高齢者

消防庁「令和6年(1〜12月)における火災の状況(確定値)」によると、令和6年の総出火件数は37,141件で前年より1,531件(4.0%)減りました。ただし内訳では住宅の比重が際立ちます。消防庁予防課の資料では、令和6年の住宅火災は11,839件と総出火件数の約3割にとどまるのに対し、総死者数1,451人のうち住宅火災の死者は1,109人と約7割を占めます。

放火自殺者等を除いた住宅火災の死者は1,030人(前年比7人増)。このうち65歳以上が779人で75.6%。平成27年の同じ割合は66.8%でしたから、10年でおよそ9ポイント上がったことになります。

なぜ高齢者に偏るのか。消防庁は、住宅火災の死者を発生経過別に見ると逃げ遅れが最も多く全体の約6割、火災件数は起きている時間帯に多い一方で死者数は就寝時間帯のほうが多いと説明しています。致命傷になるのは火の大きさより「気づくのが遅れること」で、単身・高齢の入居者が多い物件ほどこの条件に当てはまります。

死者を出す火は「たばこ・ストーブ・配線」から

令和6年の全火災37,141件を出火原因別に見ると、多い順に「たばこ」3,058件(8.2%)、「たき火」2,781件(7.5%)、「こんろ」2,718件(7.3%)、「電気機器」2,577件(6.9%)でした。

ところが死者数で見ると順番が変わります。住宅火災による死者1,030人の出火原因別内訳は、「たばこ」147人(14.3%)、「ストーブ」111人(10.8%)、「電灯電話等の配線」62人(6.0%)、「配線器具」53人(5.1%)、「こんろ」48人(4.7%)。件数上位の「たき火」は死者にほとんど結びつかず、就寝中や在室中に発生する火が死者に直結していることが読み取れます。

注目したいのは「電灯電話等の配線」と「配線器具」の合計115人です。生活習慣ではなく建物・設備側の領域で、コンセント周りのほこり、傷んだ延長コード、たこ足配線など点検で減らせる部分です。消防庁の「住宅防火 いのちを守る10のポイント」も「コンセントはほこりを清掃し、不必要なプラグは抜く」を挙げています。

室内に燃えやすいものが積み上がっているかどうかも延焼のしやすさを左右します。ごみ屋敷は孤立のサインで扱ったような住環境の悪化が見られる住戸は、火災の観点でも早めに手を打つ対象です。

住宅用火災警報器は「付けた」で終わらない

住宅用火災警報器は、平成16年に改正された消防法第9条の2により全住宅で設置・維持が義務づけられ、既存住宅も市町村条例で平成23年6月までに義務化が完了しました。東京消防庁は管内について、平成22年4月1日からすべての住宅が対象で共同住宅(マンション・アパートなど)も含まれると明記しています。

問題は普及の中身です。消防庁予防課長通知「住宅用火災警報器の設置状況等調査結果(令和7年6月1日時点)について」(消防予第274号)によると、全国平均は設置率84.9%・条例適合率65.8%。条例適合率は寝室や階段など条例が定めるすべての箇所に設置されている割合で、設置率との約19ポイントの差が「一部にしか付いていない住宅」です。

維持管理はさらに手つかずで、同調査では設置から10年を経過した警報器が32.2%、作動確認を実施した世帯の3.5%で電池切れや故障が確認されました。消防庁・東京消防庁とも本体交換の目安を設置から10年としています。

効果は数字で示されています。消防庁が令和2年から令和5年までの失火による住宅火災を分析した結果、設置されている場合は設置されていない場合に比べ死者数と損害額は半減、焼損床面積は約6割減でした。

設置義務に罰則はありません(消防庁Q&A)。ただし全日本不動産協会のQ&A(月刊不動産2007年5月号・弁護士 江口正夫氏)は、住宅火災で死者が出た場合に「設置していれば死者は減ったのではないか」という観点からの責任追及は十分あり得ると指摘しています。罰則の有無と民事上の責任は別です。

賃貸で確認したい3つのポイント

①「設置済み」ではなく「設置年」を台帳に残す。 10年を過ぎた機器は付いていても鳴らない可能性があります。入退去にともなう原状回復は室内に入れる数少ない機会で、交換の判断と作業を同時に済ませられる局面です。

②条例で必要な箇所を管轄の消防本部に確認する。 基本は寝室と寝室のある階の階段上部ですが、条例で台所などにも必要な地域があります。条例適合率が65.8%にとどまる背景には、この「一部だけ設置」があるとみられます。

③高齢入居者の住戸には連動型や補助警報装置を検討する。 消防庁は、1台が感知するとすべての警報器が鳴る連動型と、高齢の方や目・耳の不自由な方向けに音や光を出す補助警報装置の増設を推奨しています。高齢入居者に選ばれる設備と同じく募集時の説明材料にもなります。

鳴っても、聞く人がいない部屋がある

押さえておきたいのは、住宅用火災警報器がその場にいる人に知らせる装置だということです。加齢による聞こえの変化がある、就寝が深い、不在中に出火した——といった場合、鳴っていても行動に結びつきません。隣室の方が気づくこともありますが、偶然に頼る話です。

だからこそ、警報器とは別に「外から異変に気づける経路」を重ねる意味があります。スマートメーターを使った見守りは火災を感知する仕組みではありませんが、電気の使われ方の変化から生活リズムの異変を受け取れます。体調の悪化やごみの堆積といった火災の背景にある変化へ早く手を打つ入口になります。

つなぐ先も決めておきたいところです。地域包括支援センター民生委員は、生活の乱れが見えたときの相談窓口になります。認知症が疑われる場合の対応フローのとおり、火の不始末が増えているという情報は公的窓口に相談する十分な理由です。

まとめ:設置の有無ではなく「鳴る状態か」

令和6年の住宅火災による死者(放火自殺者等を除く)1,030人のうち779人・75.6%が65歳以上。死者に直結する原因はたばこ・ストーブ・配線で、逃げ遅れが約6割を占めます。一方、住宅用火災警報器の全国設置率は84.9%まで来たものの条例適合率は65.8%、設置から10年超が32.2%です。

確認すべきなのは「付いているか」ではなく、条例どおりの場所に、10年以内の機器が、鳴る状態で付いているか。そのうえで、鳴っても届かない住戸がある前提で、生活の変化に外から気づける仕組みを重ねておくことです。ご自身の物件の備えは、60秒のリスク診断でも確認できます。

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