賃貸の見守りに補助金は使えるのか|東京と横浜で違う受け取り方と「専用住宅10年」の条件
高齢者の入居を受けるなら見守りを付けたい、その費用に補助は出ないのか——。住宅セーフティネット制度の登録住宅は全国で974,807戸(2026年9月12日閲覧時点)ありますが[4]、見守りまで組み込んだ居住サポート住宅は363戸にとどまります[7]。見守りへの補助は実在します。ただし国が一律に配るものではなく、自治体ごとに受け取る人も条件も違います。東京都と横浜市の制度を例に、申請の前に決めておくことを整理します。
賃貸の見守りに補助金は出るのか
出ます。ただし窓口は自治体です。国土交通省は住宅セーフティネット制度の支援として、専用住宅・居住サポート住宅の改修費補助と、入居者の家賃等の低廉化補助を挙げ、詳細は地方公共団体に確認するよう案内しています[3]。見守りの機器やサービスそのものへの補助は、東京都や横浜市のように自治体が設けている事業です[1][2]。
同じ「見守りの補助」でも、東京都と横浜市ではお金を受け取る人が違います。ここを取り違えると、申請の順番を誤ります。
補助を受け取るのは大家か、見守り事業者か
東京都の「見守り機器設置費等補助金」は、貸主等(所有者や登録事業者)か借主(専用住宅の入居者)が申請します。対象は見守り機器の購入・設置費と見守りサービスの初回登録料等で、交付額は経費の3分の2、上限は新規登録住戸1戸あたり4万円です。同じ住戸では貸主と借主のどちらか一方しか申請できません[1]。
横浜市の「セーフティネット住宅等見守りサービス補助事業」は、市に登録した見守りサービス事業者が申請し、初期費用と月額費用のそれぞれ2分の1(上限あり)を利用料から減額する仕組みです[2]。貸主が申請書を書くのではなく、物件をセーフティネット住宅として登録するか、居住サポート住宅の認定を受けることが貸主の側の役割になります。
条件になる「専用住宅」とは——登録住宅と何が違うのか
東京都の補助を貸主が申請するには、東京ささエール住宅(東京都のセーフティネット住宅)の「専用住宅」に新たに登録し、高齢者を受け入れる登録とすることが要件です[1]。
国土交通省の説明では、専用住宅は入居者を住宅確保要配慮者に限定した住宅です[3]。要配慮者の入居を拒まない登録住宅は、要配慮者以外にも貸せます。登録住宅で受け入れる範囲を自分で決められるのとは違い、専用住宅は貸せる相手そのものを絞る登録です。横浜市の事業は「セーフティネット住宅」か「居住サポート住宅」への入居を要件としており、専用住宅に限るとは書かれていません[2]。
「10年間登録を維持」は何を縛るのか
東京都の補助は、貸主が申請する場合、原則として専用住宅として10年間登録を維持することを求めます。例外は、最初の要配慮者の入居者が退去したあと2か月以上入居がない場合で、このときは登録住宅に変更できます。借主が申請する場合は、その人の入居中、貸主が専用住宅の登録を維持し、同意書を出します[1]。
国の専用住宅改修事業はさらに重く、補助で改修した住戸は事業完了後10年以上、年1回程度の調査の対象です。補助で取得した単価50万円以上の財産について専用住宅の登録を抹消するなどの場合は、事前に国土交通大臣の承認が要り、国庫納付等の条件が付されます[5]。
補助を受ける前に、高齢者の入居が続く見込みがあるかを見ておくべきです。高齢の方が実際に探している物件の条件を確かめてから登録を決めても遅くはありません。
補助の対象になる見守りの条件
どんな見守りでも対象になるわけではありません。東京都は、見守り機器とサービスが入居者の安否を第三者が把握できるもので、機器は居室内に設置することを求めています[1]。横浜市は、IoT等の技術で入居者に負担なく見守ること、最低1日1回見守ること、異常があれば電話やメール等で住宅の管理者、親族等に必ず連絡がいくことを要件にしています[2]。
連絡先に住宅の管理者が明記されている点は見落とせません。本人や家族にだけ通知が行く仕組みでは、貸主は異変を知ることができません。電力データなどを使う場合は本人の同意も前提になります。入居者に操作を求めず、物件単位で生活の変化を拾う見守りを検討する場合も、補助の対象になるかは申請前に自治体の窓口と事業者に確かめてください。
改修工事と一緒に使える補助はあるか
部屋の改修とあわせるなら、国の「セーフティネット専用住宅改修事業」があります。補助対象工事にはバリアフリー改修などと並んで安否確認のための設備の改修工事が含まれ、令和8年度の募集期間は令和8年4月15日から12月11日17時までです[5]。
自治体の独自事業もあります。熊本県は令和8年度、見守り付きの専用住宅または居住サポート住宅を改修で供給する事業者に、補助対象事業費300万円/戸・補助上限額200万円/戸(補助率3分の2)の補助を募集しました(募集戸数8戸・期間は6月26日〜8月28日)[6]。入居中の見守りを組み込む居住サポート住宅も、国の改修費補助の対象です[3]。
申請はいつ、どの順番で出すのか
どの制度も導入の前に申請するのが基本です。東京都は、専用住宅への登録、交付申請、事業の実施、実績報告までを原則として同一年度内に終えることを求め、令和8年度の事業規模は見守り機器設置費等補助で100戸です[1]。横浜市は、見守りサービスの提供開始前に事業者が交付申請書を出します[2]。熊本県の例のように、募集期間を過ぎれば同じ年度には使えません[6]。先に機器を付けてから補助を探すと、対象外になるおそれがあります。
補助の要件・対象経費・受付状況は自治体と年度によって異なり、予算の範囲で締め切られることもあります。本記事は2026年9月12日時点の各ページの記載に基づきます。申請の可否は必ず各窓口で確認してください。
まとめ:補助から逆算しない
- 誰が受け取る制度か——貸主が申請するのか、事業者が利用料を減額するのか
- 何を約束するか——専用住宅として10年、貸せる相手を要配慮者に絞れるか
- 異変の連絡が誰に届くか——管理者に届かなければ、貸主の見守りにならない
補助は導入の後押しにはなりますが、見守りの設計そのものは誰が駆けつけるかを先に決めるところから始まります。