2026.08.10

空室対策としての高齢者入居をデータで検証|賃貸用の空き家443万戸と高齢単身借家245万世帯

約2,700文字読了目安 5分

「空室対策として高齢者の受け入れを検討したいが、本当に需要はあるのか」——賃貸オーナーや管理会社からよく聞く疑問です。感覚ではなく公的統計で確かめると、空室の規模と高齢単身世帯の賃貸需要は、想像以上に近い位置にあることが見えてきます。本記事では総務省・国立社会保障・人口問題研究所・国土交通省の一次データをもとに、空室対策としての高齢者入居を検証します。

賃貸用の空き家は443万戸|空室は市場全体の構造問題

総務省統計局の令和5年住宅・土地統計調査(2024年9月確報)によると、全国の総住宅数は6,504万7千戸、空き家は900万2千戸で、空き家率は13.8%といずれも過去最多・最高を更新しました。

注目したいのはその内訳です。空き家のうち最も多いのは「賃貸用の空き家」で443万6千戸、空き家全体の49.3%を占めます。さらに共同住宅の空き家502万9千戸に絞ると、実に78.5%(394万7千戸)が賃貸用です。1世帯当たりの住宅数は1.16戸で、住宅ストックが世帯数を上回る状態が続いています。

空室は個々の物件の努力不足だけで説明できるものではなく、住宅が世帯より多い構造から生じています。だからこそ、募集条件そのものを見直すことが対策として効きやすい領域になります。

高齢単身世帯は761万世帯、その3割超が借家に住む

同じ調査によれば、65歳以上の世帯員がいる世帯は2,375万世帯で、主世帯全体の42.7%にあたります。そのうち高齢単身世帯は761万7千世帯(32.1%)と過去最高になりました。

住まいの持ち方を見ると、高齢者のいる世帯全体では81.6%が持ち家です。ところが高齢単身世帯だけを取り出すと借家が32.2%(245万1千世帯)と大きく上がり、そのうち民営借家は160万6千世帯を占めます。「高齢者は持ち家だから賃貸需要は薄い」という見立ては、単身層には当てはまりません。

2050年に向けて増えるのは「近親者のいない単身高齢者」

国立社会保障・人口問題研究所の「日本の世帯数の将来推計(全国推計)令和6年推計」では、単独世帯は2020年の2,115万世帯から2050年に2,330万世帯(全世帯の44.3%)へ増加し、世帯主が65歳以上の世帯も2,097万世帯から2,404万世帯へ増える見通しです。65歳以上の独居率は男性16.4%→26.1%、女性23.6%→29.3%と上昇します。

さらに見落とせないのが家族構成の変化です。高齢単独世帯に占める未婚者の割合は、男性33.7%→59.7%、女性11.9%→30.2%へと上昇し、同研究所は「近親者のいない高齢単独世帯が急増する」としています。

緊急連絡先や残置物の処理を親族に頼る前提は、今後さらに成り立ちにくくなります。受け入れ体制を「家族がいる場合」だけで設計しないことが重要です。

需要はあるのに供給が届かない|拒否感の理由の9割

国土交通省が改正住宅セーフティネット法の説明資料で示したとおり、単身高齢者などの住宅確保要配慮者に対しては賃貸人の約7割が拒否感を持っています。令和3年度の同省調査では、高齢者について入居制限を行う「最も該当する理由」は「居室内での死亡事故等に対する不安」が90.9%と突出していました。

同資料は、その拒否感と「民間賃貸住宅の空き室は一定数存在」「全国の空き家約900万戸、うち賃貸用は約443万戸」という事実を並べて記載しています。空室と、部屋を借りられない高齢者が同時に存在する——これが現在の賃貸市場の姿です。埋まらない理由は需要ではなく、不安の側にあります。

データから考える、現実的な進め方3ステップ

① 対象を絞る。借家に住む高齢単身世帯は民営借家が最多で、ワンルームや1Kといった単身向け住戸と需要が重なります。設備面では高齢者等のための設備がある住宅が全体の56.0%(手すりがある住宅は44.0%)まで広がっており、手すりの設置など小規模な改修から着手できます。何を優先すべきかは高齢入居者に選ばれる設備の記事で整理しています。

② 不安の中身に手当てする。拒否感の9割が死亡事故等への不安である以上、対策もそこに合わせます。日々の安否確認ができる見守り、原状回復費用や家賃損失に備える保険、残置物処理の取り決めの3点です。制度面では、安否確認と福祉へのつなぎを備える居住サポート住宅の認定制度も選択肢になります。見守りの具体的な仕組みはスマートメーターを使った見守りの解説もあわせてご覧ください。

③ 募集で伝える。体制を整えても、仲介会社や入居希望者に伝わらなければ空室は動きません。募集図面に「見守り・保険あり」「高齢者相談可」と明記するだけでも、問い合わせの入り口は広がります。受け入れの実務手順は高齢者受け入れ戦略の記事にまとめています。

まとめ:空室と高齢化は同じ市場の表と裏

賃貸用の空き家443万6千戸と、借家に住む高齢単身世帯245万1千世帯。この2つの数字は別々の問題ではなく、同じ市場の表と裏です。将来推計を見れば単身高齢世帯はさらに増え、しかも近親者のいない世帯が中心になっていきます。拒否感の理由がほぼ一点に集中している以上、そこに手を打てるかどうかが、空室対策としての成否を分けます。

日々の見守りと、万一の際の費用を受け止める保険(原状回復を最大100万円・空室や家賃損失を最大200万円まで補償)を組み合わせておけば、受け入れの判断はぐっとしやすくなります。自分の物件がどこまで備えられているかは、60秒のリスク診断でも確認できます。

無料ホワイトペーパー配布中

『高齢入居者受け入れ完全ガイド』:最新統計・3大リスク対策・見守りサービスの選び方を1冊に。

資料を無料ダウンロード