2026.08.07

災害時に高齢入居者の安否をどう確認する?避難行動要支援者名簿・個別避難計画と大家の備え

約2,400文字読了目安 5分

台風や地震が起きたとき、単身の高齢入居者が無事かどうかを確認できる体制は整っているでしょうか。避難の呼びかけが届かない、停電で連絡が取れない、そもそも誰が確認するのか決まっていない——災害のたびに繰り返される課題です。本記事では、内閣府・消防庁の一次情報をもとに、高齢者の避難を支える公的な仕組み(避難行動要支援者名簿・個別避難計画)の現在地を確認し、そのうえで賃貸オーナー・管理会社に何ができるかを整理します。

災害の犠牲は高齢者に大きく偏っている

内閣府の令和7年版防災白書によると、令和6年能登半島地震の死者・行方不明者は594名で、うち災害関連死が364名を占めました。直接死の年代を見ると70代以上が約6割、災害関連死ではさらに偏りが大きく80代以上が全体の約8割にのぼります。

災害関連死とは、建物の倒壊などによる直接の死ではなく、避難生活での体調悪化などによって亡くなるケースを指します。つまり高齢者にとっては、揺れや浸水そのものだけでなく、その後の数日から数週間をどう過ごすかが生死を分けます。逃げ遅れを防ぐことと、避難後に孤立させないこと。この両方に、住まいを提供する側が関われる余地があります。

避難行動要支援者名簿と個別避難計画とは

公的な仕組みの中心にあるのが、市町村がつくる避難行動要支援者名簿です。東日本大震災の教訓を受け、平成25年の災害対策基本法改正により、自ら避難することが困難な高齢者や障害のある方などを掲載した名簿の作成が市町村の義務とされました。

さらに令和3年の同法改正で、名簿に載った一人ひとりについて「誰が、どの経路で、どこへ避難を支援するか」を具体的に定める個別避難計画の作成が、市町村の努力義務となりました。計画づくりには、本人をよく知るケアマネジャーなどの福祉専門職や、地域の関係者が加わります。

名簿は災害が起きてから使うだけのものではありません。本人の同意などの条件を満たせば、平時から民生委員や自主防災組織といった避難支援等関係者へ情報を共有し、日頃の見守りや訓練に活かすことが想定されています。

最新調査が示す「地域の備え」の現在地

内閣府と消防庁は令和8年6月29日、全国1,741市町村を対象とした取組状況の調査結果(令和8年4月1日現在)を公表しました。名簿については全市町村で作成済み(100%)で、うち平時から名簿情報を関係者へ提供している団体は1,642団体(94.3%)にのぼります。

一方で、注意したい数字があります。名簿に掲載されている約670万人のうち、平時から情報が共有されているのは39.9%にとどまり、約6割は地域と共有されていません。個別避難計画も、未作成の市町村は前回調査の50団体から解消された一方、作成率が2割以下の団体が911団体(52.3%)と過半数を占めます。累計では164万9,203人分の計画が作成されていますが、名簿掲載者全体から見れば道半ばというのが実情です。

制度は整いつつありますが、自分の物件の高齢入居者が名簿に載っているか、計画がつくられているかは、大家・管理会社からは基本的に見えません。「行政が把握しているはず」という前提で備えを止めないことが大切です。

名簿の提供先に大家・管理会社は含まれない

同じ調査では、地域防災計画に定める平時の名簿情報の提供先も集計されています。多い順に民生委員(1,669団体)、消防本部・消防署等、都道府県警察、自主防災組織、社会福祉協議会、自治会などが並び、賃貸物件の大家や管理会社は提供先として想定されていません

つまり、日常的に建物と入居者に最も近い立場にいながら、災害時の安否確認の枠組みからは外れているということです。地域とのつながりをつくるうえでは、名簿の提供先として上位に挙がる民生委員や、高齢者福祉の中核機関である地域包括支援センターとの関係づくりが現実的な入口になります。自治体側の取り組み事例は自治体の孤独死対策をまとめた記事もご参照ください。

大家・管理会社が今からできる3つの備え

第一に、緊急連絡先の棚卸しです。高齢入居者の連絡先や親族の情報が何年も更新されていないケースは珍しくありません。契約更新のタイミングなどで定期的に確認し、連絡が取れる相手を複数確保しておきます。

第二に、安否確認の手順を決めておくことです。どの規模の災害でどの入居者に連絡するのか、連絡がつかない場合に誰が現地を確認するのか、立ち入りの判断はどうするのか。入居時にプライバシーへの配慮とあわせて取り決めておけば、いざというときに迷いません。

第三に、人手に頼りきらない見守りを重ねることです。災害時は管理担当者自身も被災し、全戸へ電話をかけ続けることは現実的ではありません。電力データなどから生活の変化を自動で捉える仕組みがあれば、連絡が取れない住戸のうち「明らかに生活の動きが止まっている部屋」を優先して確認できます。仕組みの詳細はスマートメーターを使った見守りの解説記事で紹介しています。

まとめ:災害時こそ「気づける仕組み」が効く

災害の犠牲は高齢者に偏り、避難後の関連死という形でも表れます。名簿と個別避難計画という公的な仕組みは広がりつつあるものの、平時に地域と共有されている掲載者は約4割にとどまり、その提供先に大家・管理会社は含まれていません。行政の備えを待つのではなく、連絡先の整備・安否確認手順の取り決め・自動で気づける見守りという自前の備えを重ねておくことが、入居者と物件の双方を守ります。

日々の見守りと、万一の際の費用を受け止める保険(原状回復を最大100万円・空室や家賃損失を最大200万円まで補償)を組み合わせておけば、災害時にも落ち着いて対応できます。自分の物件がどこまで備えられているかは、60秒のリスク診断でも確認できます。

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