2026.07.25

孤独死対策|自治体の事例と、大家が今日から使える連携先まとめ

約3,100文字読了目安 6分

単身の高齢入居者を受け入れるとき、多くの大家・管理会社が気にかけるのが孤独死・孤立死のリスクです。「万一のとき、誰が気づいてくれるのか」「原状回復や残置物はどうなるのか」——こうした不安に、実は多くの自治体がさまざまな対策で向き合い始めています。本記事では、国の法整備から具体的な自治体の取り組みまでを整理し、大家・管理会社がその仕組みをどう活かし、自前の備えとどう組み合わせればよいかを考えます。

なぜ今、自治体が孤独死対策に動くのか

背景にあるのは、単身で暮らす高齢者の増加です。内閣府「令和7年版高齢社会白書」によると、令和5年時点で65歳以上の者のいる世帯は2,695万1千世帯にのぼり、全世帯(5,445万2千世帯)の49.5%を占めています。そのうち単独世帯(一人暮らし)は約3割にあたります。

さらに、65歳以上の一人暮らしの割合は男女ともに増え続けています。同白書によれば、令和2年に男性15.0%・女性22.1%だったこの割合は、令和32年(2050年)には男性26.1%・女性29.3%まで高まると見込まれています。地域で暮らす高齢者の「単身化」が進むほど、日常的に様子を見る人がいない世帯が増え、異変の発見が遅れやすくなります。孤独死・孤立死が個人や家族だけの問題ではなく、地域全体で備えるべき課題になってきた、というのが自治体が動く理由です。

孤独・孤立対策推進法で自治体の役割が明確に

国レベルの大きな動きが、孤独・孤立対策推進法です。令和5年に成立・公布され、令和6年4月に施行されました。孤独・孤立対策の基本理念や、国・地方公共団体の責務、施策の基本となる事項、推進体制などを定めた法律で、これにより国と地方が連携して総合的に対策に取り組む枠組みが整いました。

この法律では、地方公共団体に対し、支援に関係する機関・団体で構成する孤独・孤立対策地域協議会を置くよう努めることが求められています。福祉部門や医療・介護の専門機関だけでなく、地域で高齢者と接点を持つ多様な主体が連携して見守る体制づくりが後押しされる、ということです。単身高齢者と日常的に関わる大家・管理会社も、地域の見守りの担い手のひとつになり得ます。

お住まいの地域の取り組み状況は、市区町村の福祉部門や地域包括支援センターに問い合わせると確認できます。自治体によって、協議会の設置や事業の内容には差があります。

事例1:終活・死後事務を支える「横須賀方式」

先進的な取り組みとして全国から注目されているのが、神奈川県横須賀市のエンディングプラン・サポート事業です。市内には1万人を超えるひとり暮らしの高齢者がおり、身元がわかっていながら引き取り手のない遺骨が年間50体にのぼる——こうした現実を背景に、2015年から始まった事業です。

この事業では、ひとり暮らしで頼れる身寄りがなく生活にゆとりがない高齢者を対象に、市が葬儀・納骨・リビングウィルといった終活課題の相談を受けます。希望者は市内の協力葬儀社との間で生前契約(死後事務の委任)を結び、市は支援プランを保管したうえで、安否確認の訪問を行い、入院・入所・死亡といった局面ごとに、あらかじめ指定された関係機関や協力事業者へ速やかに連絡します。

大家の視点で見ると、こうした仕組みは「万一のときに誰が対応するのか」という不安を和らげる助けになります。とりわけ残置物や葬儀の問題は、大家が単独で抱えると負担が大きい領域です。認知症が疑われる入居者への対応と同様に、まずは地域にどんな支援窓口があるかを知っておくことが、いざというときの初動を早めます。

事例2:ライフライン事業者と連携した見守り

もうひとつ広がっているのが、日常生活に接点を持つ事業者と自治体が連携する見守りです。電気・ガス・水道といったライフライン事業者や、新聞・郵便、食事や食材の宅配を行う事業者などと自治体が協定を結び、配達や検針の際に「新聞がたまっている」「呼びかけに応答がない」といった異変に気づいたら、行政や地域包括支援センターへ通報する仕組みです。民生委員や地域の見守りネットワークと組み合わせて運用する自治体もあります。

近年は、こうした人の目による見守りに加えて、センサーやIoTを使った見守りを取り入れる自治体も増えています。特別な操作を必要とせず、日々の生活リズムの変化から異変を察知できる点が特徴です。電力データを使った見守りのように、工事やカメラを伴わずに導入できる仕組みは、プライバシーへの配慮と早期発見を両立しやすく、賃貸物件とも相性がよい方法として注目されています。

自治体の見守りサービスは、対象年齢・世帯要件・所得基準などの条件が設けられていることが少なくありません。すべての入居者が対象になるとは限らないため、物件ごとに「使える制度」と「対象外になる部分」を確認しておくことが大切です。

大家・管理会社が自治体の仕組みを活かすには

自治体の対策を実務に活かすうえで、まず押さえたいのが物件所在地の相談窓口を把握しておくことです。各市区町村の地域包括支援センターや高齢福祉の窓口は、見守りや介護、成年後見といった支援につなぐ入口になります。入居時や更新時に緊急連絡先を確認しておけば、異変時に速やかに連携できます。

また、地域で高齢者の住まいを支える居住支援法人と連携しておくと、入居後の見守りや生活支援まで含めて相談しやすくなります。自治体の施策は地域によって内容が異なり、対象要件から外れる入居者も出てきます。だからこそ、高齢者の受け入れを空室対策として捉えるのであれば、公的な仕組みに任せきりにせず、物件側でも一定の備えを持っておくことが現実的です。

まとめ:公助と自助を組み合わせて備える

孤独・孤立対策推進法の施行を受け、自治体の孤独死・孤立死対策は着実に広がっています。横須賀市のような終活・死後事務の支援、ライフライン事業者やIoTを活用した見守りなど、大家・管理会社が知り、連携できる仕組みは増えてきました。一方で、これらは地域差や対象要件があり、すべての入居者・すべての場面を公助だけでカバーできるわけではありません。

そこで有効なのが、公助と自助を役割分担で組み合わせる考え方です。地域の見守りや相談窓口とつながって早期発見の網を広げつつ、居室内で万一のことが起きた場合の原状回復費用は最大100万円、空室・家賃損失は最大200万円まで補償する孤独死保険で経済的なリスクを受け止める——この二層構えが、単身高齢者の受け入れに踏み出すための土台になります。自分の物件でどこまで備えられているかは、60秒のリスク診断でも確認できます。

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