2026.07.22

生活保護受給の高齢者を受け入れる実務|住宅扶助と代理納付で滞納不安を下げる

約2,500文字読了目安 5分

「生活保護の方は家賃を滞納しそうで不安」——高齢の入居希望者が生活保護を受けていると聞くと、こうした理由で申し込みをためらう大家や管理会社は少なくありません。しかし、生活保護の家賃は公費から支給される仕組みがあり、福祉事務所が大家へ直接支払う制度も整っています。仕組みを知らないまま敬遠すると、空室を埋める機会をみすみす逃すことにもなりかねません。本記事では、生活保護を受ける高齢者を受け入れる際に押さえておきたい住宅扶助と代理納付の仕組み、そして受け入れの実務を整理します。

生活保護を受ける高齢者は増え続けている

厚生労働省が2025年3月に公表した被保護者調査(令和5年度確定値)によると、生活保護を受けている世帯は1か月平均で約164万世帯にのぼります。このうち最も多いのが高齢者世帯で908,629世帯、全体の55.3%を占めています。さらに、その大半が単身世帯で842,489世帯(全体の51.3%)と、被保護世帯のおよそ半分が高齢の単身者という構成です。

被保護実人員は約202万人、人口に対する保護率は1.62%です。高齢化と単身世帯の増加が続く中、生活保護を受ける高齢者は今後も一定の割合を占め続けると考えられます。高齢者の受け入れを空室対策と捉える視点に立てば、生活保護受給者は無視できない入居希望者層です。

家賃は「住宅扶助」として支給される仕組み

生活保護には生活扶助や医療扶助など複数の扶助があり、家賃はそのうちの「住宅扶助」として支給されます。住宅扶助は、地域や世帯人数ごとに定められた上限額の範囲内で、実際の家賃額が支給される仕組みです。つまり大家にとっては、家賃の原資が公的に一定程度担保されているとも言えます。

一方で、住宅扶助は原則として受給者本人に現金で給付されるため、本来家賃に充てるべき費用が生活費などに使われ、家賃が滞納されるケースがまれに生じます。厚生労働省の通知も、住宅扶助費が家賃支払いに的確に充てられる必要があることを課題として挙げています。この課題への答えが、次に述べる代理納付です。

滞納不安を下げる「代理納付」制度

代理納付とは、生活保護法第37条の2に基づき、保護の実施機関である福祉事務所が住宅扶助(および共益費)を受給者本人に代わって大家へ直接支払う制度です。2006年から施行されており、これを利用すれば大家は毎月の家賃回収の手間が減り、本人の使い込みによる滞納リスクも抑えられます。厚生労働省の通知でも、代理納付は「家賃等の支払いへの家主の不安を軽減し住宅提供を促進する」ことや、家賃が確実に支払われることで受給者の居住の安定につながることが目的として明記されています。

住宅セーフティネット法に基づく登録住宅に新たに入居する受給者については、原則として代理納付を適用する取り扱いとされています。代理納付の実施に受給者本人の同意書や委任状は要しないとされている点も、実務上のハードルを下げています。

受け入れ時に大家・管理会社ができる実務

1つ目は、福祉事務所(ケースワーカー)との連携です。入居者を担当する福祉事務所の窓口を把握し、代理納付が利用できるかを早めに相談しておくと、家賃回収の不安を大きく減らせます。代理納付の運用は自治体によって幅があるため、個別に確認するのが確実です。

2つ目は、居住支援の担い手との連携です。単身の高齢受給者は身寄りが少ないことも多く、入居後の生活を支える存在が受け入れの安心につながります。居住支援法人や地域包括支援センター、ケアマネジャーとつながっておくと、緊急連絡先の確保や見守りの面でも心強い体制になります。

生活保護の受給と、家賃債務保証会社の審査は別の話です。受給者でも保証会社を求められることは多いため、高齢者の保証審査に通すポイントもあわせて確認しておくと、受け入れ準備がスムーズになります。

滞納不安の先にある「孤独死・発見の遅れ」に備える

代理納付で家賃の滞納不安が下がっても、居室内での死亡や発見の遅れといった不安は別に残ります。単身高齢者の入居で大家が抱える不安は、家賃と安否の2つに大きく分けられ、家賃は住宅扶助と代理納付が、安否は見守りと保険が受け持つ、と役割を分けて考えると整理しやすくなります。

電力データを使った見守りのように毎日の安否を自動で確認する仕組みと、原状回復費用を最大100万円、空室・家賃損失を最大200万円まで補償する孤独死保険を組み合わせれば、生活保護受給者の受け入れでも「万一のときにどうなるか」への備えを整えられます。孤独死保険は入居者が生活保護を受けているかどうかにかかわらず、物件の備えとして活用できます。

まとめ:制度を知れば受け入れやすい層になる

生活保護を受ける高齢者は、被保護世帯の半数を占める単身高齢者を中心に増え続けています。家賃は住宅扶助として公費から支給され、代理納付を使えば福祉事務所から大家へ直接支払われるため、滞納の不安は制度で下げられます。あとは福祉事務所や居住支援の担い手と連携し、見守りと保険で安否のリスクに備えれば、生活保護受給者は「リスクの高い入居者」ではなく「受け入れやすい入居者」に変わります。自分の物件の備えがどこまでできているかは、60秒のリスク診断でも確認できます。

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